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心臓血管センターと心臓疾患の治療について

循環器内科 長谷 守 副院長に
「心臓血管センターと心臓疾患の治療について」
お話していただきました。

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心臓血管センターについて教えてください。

当院の心臓血管センターでは、循環器内科医8名(常勤)と心臓血管外科医2名が緊密な連携をしながら、患者さんにとって、より安全で効果的な治療を提供しています。また、同じ血管病として病変の多い脳卒中における脳神経外科医との連携も強化し、診療体制をより一層充実させています。

当院での治療の特徴を教えてください。

 当院の特徴として、心筋梗塞や脳卒中、大動脈瘤など血管病の予防から診断、治療、治療後の経過観察など各診療科の枠を超えて取り組んでいることが挙げられます。脳神経外科および循環器内科、心臓血管外科、放射線治療科が共同で画像診断部門のデータを収集し、画像診断・機能評価を行っています。診断・評価に基づき、個々の患者さんに合わせて、体への負担(侵襲度)や退院後の生活を考慮し、できる限り、患者さんの生活の質(QOL)を低下させない治療法を提案させていただきます。

心臓血管センターでは、虚血性心疾患をはじめ心筋症、不整脈、大動脈疾患、末梢血管疾患など幅広く心血管系疾患に対応し、急性心筋梗塞、急性大動脈解離、急性心不全など、生死を分ける救命救急医療にも臨んでいます。カテーテル治療、外科手術を含めた最新の知見に基づく治療を提供しています。

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心臓発作(心筋梗塞)について教えてください。

 心臓発作(心筋梗塞)の多くは、心臓に血液を送り出す役割を担っている「冠動脈」という細い血管の動脈硬化が原因で起こります。冠動脈が狭くなったり(狭窄)、詰まったり(閉塞)することで血流に障害が起きると、胸の痛みや胸部の違和感といった症状がみられます。このような症状に早く気付き、必要に応じた検査や治療をすることが重要となってきます。

冠動脈の検査には、造影剤という薬を使用した冠動脈CT検査や冠動脈造影検査(CAG)があります。冠動脈造影検査では、カテーテルと呼ばれる細い管を血管内に挿入し、冠動脈の状態を調べます。また、カテーテルを血管の狭窄・閉塞部位まで進め、バルーン(風船)で狭窄を拡げたり、ステントという金属でできた網目状の筒を血管内に挿入して、詰まった血管を開通させる経皮的冠動脈形成術(PCI)とよばれる治療も行います。

狭心症や急性心筋梗塞は、カテーテル治療の適応となることが多いですが、血管が狭窄している部位や程度によっては、冠動脈バイパス術という外科手術の方が安全で効果的な場合もあります。その場合、患者さんにとって、より安全で効果的に治療できるかを、循環器内科医と心臓血管外科医で検討し、治療方針を決めています。

正常な血管

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血管が狭くなっている(狭窄)状態

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血管が詰まっている(閉塞)状態

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バルーン血管形成術

バルーン(風船)で血管の内腔を拡張する

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冠動脈ステント留置術

ステント(金属でできた網目状の筒)を血管内に留置

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不整脈の治療について教えてください。

不整脈には、頻脈性不整脈(脈が速くなる)と徐脈性不整脈(脈が遅くなる)、期外収縮不整脈(リズムが乱れて脈が飛ぶ)の3種類があり、病態によって、内服治療、カテーテルによる心筋焼灼術(カテーテルアブレーション)、ペースメーカーや植え込み型除細動器と呼ばれるデバイスを皮下に植え込む治療法があります。
頻脈性の不整脈で用いられる治療法の一つであるカテーテルアブレーションは、不整脈の発生源に対して、カテーテル先端から高周波電流を流して焼灼することで、不整脈を根治する治療法です。
徐脈性不整脈に対しては、従来のペースメーカーに加えて、高齢者などにはより低侵襲のリードレスペースメーカーも導入しています。

アブレーション治療の対象となる主な疾患
疾患名 不整脈の状態 主な症状
心房細動 心房といわれる心臓の上の部屋が不規則な心筋収縮が1分間に300 回以上起こる 動悸、めまい、息苦しさ、脱力感、胸部不快感
自覚症状がない場合もあり
心房粗動 規則的な心筋収縮が1 分間に240 回以上起きる
発作性上室頻拍 発作的に脈がはやくなり、しばらく続いたあとに突然停止する 動悸、めまい、ふらつき
期外収縮 正常な拍動の間に時々不規則な拍動としてあらわれる 脈が飛ぶ、胸部不快感
自覚症状がない場合もあり
心室頻拍 心室といわれる心臓の下の部屋が1分間に120 回以上収縮する 動悸(頻繁に感じる場合がある)、ふらつき、脱力感、胸部不快感

低侵襲手術について教えてください。

体にメスを入れる手術では、「出来るだけ、傷を小さくしたい」というのは全ての患者さんの望みではないでしょうか。当院では、皮膚の切開を小さくしたり、目立たない位置を切開したりすることにより、患者さんの生活の質(QOL)を向上させる低侵襲心臓手術(MICS Minimally Invasive Cardiac Surgery)にも取り組んでいます。

低侵襲心臓手術のメリットとしては、傷が小さい(胸骨正中切開しない)ことに加え、早期退院・早期社会復帰が望める、感染(縦隔炎)がない、出血が少ないなどのメリットもあります。

その他の低侵襲手術として、大動脈瘤に対するステントグラフト※内挿術があります。開腹、開胸することなく、経カテーテル的に大動脈瘤内にステントグラフトを内挿することで大動脈瘤が破裂することを防ぐ手術です。1週間以内の退院、退院後すぐに社会復帰が可能です。

また、下肢静脈瘤に対しては、スーパーグルー療法と呼ばれる治療法があります。局所麻酔下でカテーテルを介して医療用の瞬間接着剤を血管に注入し、血管を閉じてしまう治療法です。レーザー治療と比較して、ヤケドや術後の痛みが少ない、血栓形成が少ない、再発率が低い、ストッキング着用が不要などのメリットがあります。

※ステントグラフト…ステントという形状記憶合金でできた骨組みに、グラフトと呼ばれる人工血管を縫い付けた筒状の形をしたもの。

患者さんへのメッセージをお願いします。

高血圧、脂質異常症、糖尿病、メタボリックシンドローム、高尿酸血症などの生活習慣病は、適切な治療を受けずに放置していると、心臓病を発症する可能性も高くなります。

「治療を始めたら一生、薬を飲まされるのでは…」と不安になり、診察や検査を先延ばしにして、複数の病気が合併してしまう方も少なくはありません。早期に生活習慣病のコントロールを始め、運動や食事などの生活習慣も改善していけば、心臓病のリスク軽減に繋がります。 

病気や治療に対する不安を解決することは簡単ではありません。私たちは、診療を通じて、患者さんご自身が健康状態に向き合い、「できるだけ元気で長生き」できるようサポートに努めてまいります。

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