当院陽子線治療の特徴
日本は世界をリードする陽子線治療先進国です。国内で12(2016年11月現在)の陽子線施設が稼働しています。当院の陽子線治療は他施設と比較して以下の特徴を持っています。2種類(拡大ビーム法とスキャニング法)の陽子線治療法が選択可能
当院の陽子線治療装置は陽子線の出口部分に、ユニバーサルノズルという構造を採用しています。これによって、がんの種類に応じて2種類の照射法を使い分けることができます。ユニバーサルノズル
拡大ビーム法
肺がん、肝臓がんなど呼吸により動くことが予想される腫瘍に対しては「拡大ビーム法」で治療を行います。拡大ビーム法は照射室まで運ばれてきたビームをリッジフィルターによって拡大し、その後ボーラス、コリメータと呼ばれる機器(器具)でがんの形状に合わせて照射する方法です。
スキャニング法
前立腺がん、頭頸部がんといった動きが少ない腫瘍や、より精密な陽子線治療が必要な腫瘍に対しては「スキャニング法」を用いて治療します。スキャニング法は陽子線ビームを点描のように、がんを塗りつぶすように照射する方法で当院ではラインスキャニングという断続的な照射方法を採用しています。
インルームCTやコーンビームCTを使用した精密な画像誘導放射線治療
陽子線治療は「腫瘍に限局した治療」を日々行っていくことが最も重要です。このため毎回、治療時に陽子線を照射したい腫瘍や周囲にある臓器が治療計画通りかどうかを確認することが非常に重要になります。これを画像誘導放射線治療と呼びます。当院では陽子線治療で通常行われているX線写真による位置確認に加え、2種類のCT装置を治療室に備えています。陽子線治療室
もう一種類はコーンビームCTで、陽子線ガントリーに取り付けられています。ガントリーを一回転させることで撮像が可能です。ベッドを回転させる必要がないので、より短時間で撮像が可能です。
これら2つのCT装置を駆使し、より高精度な画像誘導陽子線治療(IGPT:Image-guided proton therapy)を行います。
陽子線治療に代表される粒子線治療の弱点の一つとして、臓器や腫瘍の変動に弱いことが挙げられます。つまり、治療中に腫瘍が縮小したり、体形が変化したりすると、予定していた陽子線治療とズレが生じてしまうケースがあります。当院ではインルームCTやコーンビームCTを使用し、こうした変化をいち早く見つけ、必要に応じて再計画を行い、より適切な治療を提供するアダプティブ陽子線治療(適応陽子線治療)を実施します。