認知症緩和ケア教育プログラム(JSCI)

認知症緩和ケア教育プログラム(JSCI)

スウェーデン王立財団「シルヴィアホーム」認知症緩和ケア教育プログラム

緩和ケアについて

WHO(世界保健機構)は1990年、「緩和ケアとは、治癒を目指した治療が有効でなくなった患者に対する積極的な全人的ケアである。痛みやその他の症状のコントロール、身体的、精神的、社会的、そして霊的な問題の解決が最も重要な課題となる」と定義しました。

「緩和ケアの目標は、患者とその家族にとってできる限り可能な最高のQOL(生活の質)を実現することである。末期だけでなく、初期の患者に対しても治療と同時に適用すべきである」と、その目標を設定しています。

緩和ケア(Palliative Care)はラテン語のパリウム(Pallium)に由来し、「マント」という意味です。ホスピスはラテン語の「ホスピティウム」に由来し、「暖かく迎える」という意味です。

イギリス、アメリカなどの英語圏は、ホスピスケア(Hospice Care)という言葉を使用し、カナダなどのフランス語圏、あるいはスウェーデンなどの北欧では、緩和ケア(Palliative Care)という言葉を使用しているのが一般的です。このように、緩和ケアとホスピスケアはほぼ同じ意味を持っています。しかし、緩和ケアという場合、症状を緩和していくという考え方が前面に出されている点で、ホスピスケアと微妙な違いがあります。

日本においては、平成2年(1990)に厚生省(現在の厚生労働省)が診療報酬に「緩和ケア病棟入院料」を設けてから、ホスピスという呼び方よりも、緩和ケアという呼び方が多く用いられるようになってきました。

末期のがん患者やエイズ患者など、死を間近に控えた患者に対する末期医療については、無理に命を延ばすことを目的とする治療よりも、心身の苦痛や不安をできるだけ軽くし、残された人生の質を高める援助に重点を置く必要があり、患者の人間としての尊厳を守る医療の見直しが社会的に求められるようになりました。

つまり緩和ケアにおいては、もう医療的に完治することができない病気であると分かった時、それ以降は不必要に延命的なケアを行わずに、患者やその家族を1つの大きなマントですっぽりと包んでしまうような全人的ケアを行い、患者やその家族に可能な限り最高のQOLを享受してもらうことを目標にしています。

そして、スウェーデンの高齢者福祉では、今までがん患者などの末期症状において行われていたターミナルケアの概念を広げ、認知症ケアにおいても緩和ケアで患者や家族を包み込むようになりました。

スウェーデンの緩和ケアでは、治療が不可能になった疾患を抱える患者および家族のQOLの向上のために、医師、看護師、ケアマネージャーやその他の介護職員と家族が協力するチームによってケアが行われ、そのケアは、患者と家族が可能な限り人間らしく快適な生活を送れるように提供されています。

タクティール研修

JSCI日本スウェーデン福祉研究所指定 認知症緩和ケア研修センター

シルヴィアホーム認知症緩和ケア 看護・介護教育研修センター

当施設では、スウェーデン王立財団法人「シルヴィアホーム認知症緩和ケア教育プログラム」の理念を基に看護・介護を行っています。スウェーデンの高齢者福祉では、人格を尊重するスウェーデン福祉の理念がどのような状況においても反映されています。

認知症緩和ケアを実践する中で安心感、信頼関係はとても大切なことです。シルヴィアホームの認知症緩和ケアでは、補完的な療法「タクティールケア」を通して、利用者とコミュニケーションを築いています。「タクティール」という言葉はラテン語で「触れる」ということを意味する「タクティリス(Taktilis)」からきており、指圧や痛点を刺激するマッサージではなく、その言葉の由来通り手のひらを使って、相手の手足や背中を柔らかく包み込む様に触れます。これにより皮膚と皮膚を通して互いにコミュニケーションをとることができます。また、認知症によくみられる不安や恐怖心の軽減QOL(生活の質)向上にも繋がります。

当法人介護事業では、現場のケアスタッフがこの理念・手法を学び日々の認知症ケア、利用者とのコミュニケーションに導入しております。平成19年5月より日本スウェーデン福祉研究所の指定を受け、北海道内の「シルヴィアホーム認知症緩和ケア看護・介護教育センター」として研修事業を行っております。

コース紹介

ケアスタッフのための初級コース
「認知症ケアと緩和ケア理念」
認知症症候群の一般的な原因、さまざまな症状を取り上げ、認知症患者のケアに従事しているスタッフとしてどのように対処できるか、対応の仕方やコミュニケーションなどについて解説します。
タクティールケアⅠコース
「タクティールケアの理論と実践」
手足あるいは全身に対し痛点を刺激することなく手で触れ、興奮状態や不安感、痛みなどを緩和する画期的な方法です。
タクティールケアⅡコース
「タクティールケアの応用」
「タクティールケアⅡコース」では、「タクティールケアⅠコース」で学んだ理論と手技を基に、腹部・頭・顔へのタクティールケア施術法を学びます。

会場

介護老人保健施設「ら・ぱーす」(JSCI認定研修センター)
札幌市北区篠路町上篠路6-286