<第1回>手術支援ロボット「ダヴィンチ」の仕組みや特徴について
今やAIやロボット技術は、私たちの生活のあらゆる場面で活躍しています。そんな中、医療現場でも“ロボットが活躍する手術”が現実のものとなっていることをご存じでしょうか?
といってももちろん、ロボットが自動で手術を行ってくれるわけではありません。
札幌禎心会病院では、最先端の手術支援ロボット「ダヴィンチ(da Vinci Xi)」を使用した腹腔鏡手術(ダヴィンチ手術)を行っています。

そもそも、「腹腔鏡手術」とは?
“腹腔鏡”と呼ばれる電子スコープで、お腹の中をモニターに映し出しながら行う内視鏡手術の一種です。
腹腔鏡手術では、3~10㎜程のいくつかの小さな孔をおなかに開けて腹腔鏡や手術のための鉗子(かんし・はさみに似た形の医療器具)、ハサミなどの手術道具を挿入し、それらを外から操作することで手術を行います。
このため、開腹手術と比べてキズが小さく、術後の痛みや出血量が少ないのが大きな特長です。
腹腔鏡(電子スコープ)
腹腔鏡手術
鉗子
従来の外科手術と腹腔鏡手術の違い
従来の外科手術では、おなかを切り開いて手や手術器具を直接入れ、肉眼で直接臓器を見ながら治療する開腹手術が中心でしたが、
おなかを大きく切る必要があるため、術後の痛みなどで回復に時間がかかり、患者さんの身体の負担が大きいものでした。
一方で腹腔鏡手術は腹腔鏡や鉗子が入る小さな孔を数か所開けるだけなので痛みが少なく、早期の回復が期待できます。
また、腹腔鏡で拡大して見ることができるため精緻な操作が可能となり、体の機能を最大限温存することができます。

当院で導入した手術支援ロボット「ダヴィンチ」について
札幌禎心会病院に導入されている「ダヴィンチ(da Vinci Xi)」は、
腹腔鏡手術をより正確かつ安全にサポートするロボット支援システムで、3つの機器で構成されています。

①患者さんに接続する機器(ペイシェントカート)
4つのアームを持ち、1本が高画質の3Dカメラ、残る3本のアームにそれぞれロボット専用鉗子が設置されています。
それらを術者が操作機器で操作し、手術を行っていきます。
3Dカメラでは肉眼では見えにくい神経や血管も15倍に拡大して見ることが可能です。
②ハイビジョン3D画像を生成する機器(ビジョンカート)
患者さんに接続する機器から送られてくる、3Dカメラの映像を出力する機器。
鮮明かつ奥行きのある映像により、おなかの中の臓器や血管などの構造を容易かつ正確に認識が可能です。
③術者が操作する機器(サージョンコンソール)
多関節で動きの自由度が高い鉗子を操作するため、ピンポイントでアプローチできて組織の損傷が最小限で済みます。
また、手ブレの自動補正や、指の動きを縮小して鉗子に伝えるモーションスケール機能があり、指の動きを5分の1まで小さく設定することが可能。
人間の手では難しい繊細な動きによる手術が可能です。

画像左から②ビジョンカート、 ①ペイシェントカート、 ③サージョンコンソール
手術支援ロボットは、キズの小ささや術後の早期回復といった腹腔鏡手術の利点を活かしながら、より安全で正確な手術をサポートする医療機器です。
次回は、札幌禎心会病院でのダヴィンチ手術の現況や医師の声についてご紹介します。